富山鹿島町教会

トップページ最新情報教会案内礼拝メッセージエトセトラリンク集
←戻る 次へ→
.

「ナルニア国物語」について 第4回

1.「ライオンと魔女」(3)

 牧師 藤掛順一



 ビーバーは、明日子どもたちをアスランのいる「石舞台」に案内することになっている、それがタムナスを助け出すための一番の早道だ、けれども子どもたちもそこで重要な働きを負うことになる、と言って、もう一つの古い言い伝えを紹介します。それは、二人のアダムの息子とイブの娘が、東の海岸にあるケア・パラベルの城の四つの王座についた時、白い魔女の時代が終り、魔女の命も尽きる、というものです。それゆえに魔女は人間の子どもがナルニアに現れることを恐れているのです。
 ところが、そのような話に夢中になっている間に、エドマンドがいなくなっていました。そのことに気付いた子どもたちは捜そうとしますが、ビーバーは、エドマンドは魔女の館へ行ったのだ、と言います。彼は魔女の食べ物を食べて、魔女の味方になってしまった者の目つきをしていた、というのです。彼らは、エドマンドの通報で魔女の手下が来る前に、石舞台へと出発します。
 エドマンドは、寒い思いをしながら、ようやく魔女の館にたどりつきました。そこには石に変えられたナルニアびとたちが立像のように立ち並んでいました。魔女はエドマンドから、きょうだいたちがビーバーの家にいること、そしてアスランが石舞台にいることを聞くと、秘密警察長官モーグリム(狼)に、ビーバーの家に行って見つけた者を皆かみ殺せと命じ、自分はそりの用意をさせてエドマンドを乗せ、石舞台へと出発します。もはや最初に会った時のやさしい(とエドマンドには思えた)女王の姿はなく、冷酷な魔女の本性がむき出しになっていました。
 一方ビーバーたち一行は、途中の秘密のほら穴で夜を明かしました。朝、そりの鈴の音がしました。それは、トナカイの引くサンタクロースのそりでした。ナルニアはこれまで、魔女の魔法によって一年中冬なのに、クリスマスが来なかったのです。ところが、アスランが動き出し、魔女の魔法の力が弱くなったために、ついにサンタクロースが来ることができるようになったのです。これは、魔女の支配がゆるみはじめた徴です。サンタクロースは彼らそれぞれにプレゼントを渡しました。ピーターには一個の盾と一ふりの剣、スーザンには弓矢と象牙の角笛、この角笛は、それを吹けばどこにいても必ず何かの助けが来る魔法の角笛でした。そしてルーシィにはダイヤモンドの小びんに入った薬と短剣、この薬は、一滴でどんな病気も傷もなおるというものでした。サンタクロースは、「クリスマスおめでとう!ほんとうの王さま、ばんざい!」と言って去っていきました。本当の王様とはアスランのことです。しかし「クリスマスおめでとう」と共にそれが語られる時、クリスマスにお生まれになった主イエス・キリストこそが本当の王であられることが暗示されているのです。そしてそのまことの王が来られることによって、魔女の支配は終わるのです。クリスマスは、まことの王の誕生によって、罪の支配が終わったことを喜ぶ祭であることが、このようにして描かれているのです。
 さてエドマンドの方は、魔女のそりに乗せられて石舞台めざして進んでいましたが、その途中、リスやキツネや小人やフォーンたちがクリスマスの祝いの食事をしているのに行き当りました。彼らはそれをサンタクロースにプレゼントしてもらったのでした。それを聞いた魔女は激怒し、彼らを石に変えてしまいます。エドマンドは、それを見てはじめて、自分以外の者をかわいそうだと思ったと語られています。
 しばらくすると、そりの進み具合が悪くなってきました。雪が溶け始めたのです。魔女の魔法の絆がゆるみ、冬が終わって春が来ようとしていました。もうそりは使えなくなり、彼らは歩いていく他なくなりました。森は数時間の内に、一月から五月の姿に変っていったのです。
 ピーターたちの一行は、夕方、石舞台に着きました。石舞台とは、大きな岩でできたテーブルで、その上には誰も読むことのできない奇妙な文字が刻まれていました。その石舞台を中心とする野原に、アスランの陣営がありました。子どもたちは、偉大なライオン、アスランの前に進み出ます。その場面を紹介しましょう。
 「われら、ここにまいりました。アスランよ!」
「ようこそ、ピーター、アダムのむすこよ」とアスランがいいました。「して、ようこそ、スーザンにルーシィ、イブのむすめたちよ。また、ようこそ、ビーバーどの、ならびにご夫人」
 アスランの声音は、ふかく、朗々としていて、みんなのそわつきをはらうはたらきがありました。一同は、よろこばしくなると同時に、すっかりおだやかになりました。アスランの前に立って、何もいわないでいても、落ちつかない感じはありませんでした。 「しかし、四人めの者は、どこに?」とアスランがたずねました。「あの者は、みんなを裏切って、白い魔女の味方につきました、アスランよ」とビーバーさんがいいました。その時、何かがピーターに、こういわせました。「その原因の一部は、わたしのせいでした、アスランよ。わたしはあの弟をしかりとばしたのですが、そのためにまちがったほうにいかせたように思われます。」これをきいて、アスランは、ピーターをなだめもせず、せめもせず、ただじっと、そのまじろぎしない大きな眼でながめただけでした。すると、ほかに何もいうことがないように、その場の人びとは感じました。「お願いです、アスラン。エドマンドを助けるために、何かできましょうか?」とルーシィ。「あらゆることをしよう。だがそれは、思ったよりむずかしいことになりそうだ。」とアスラン。それきりしばらくのあいだ、アスランは何もいいませんでした。その時まで、ルーシィは、アスランの顔がなんと、威風堂々としていて、力強く、しかもなごやかなのだろうと思っていましたが、いま、それとともに悲しいところがあるという思いが、むねをつきました。

 これが、子どもたちとアスランとの最初の出会いです。アスランがどのような存在であるかがここにも印象深く描かれています。
 さてその直後、魔女の秘密警察長官である狼のモーグリムがアスランの陣営を襲います。ピーターはその狼と戦い、殺して初陣を飾ります。アスランの部下の動物たちが、エドマンドを助け出すために、逃げていくモーグリムの手下を追っていきました。果して彼らはエドマンドを助け出すことができるのでしょうか。そしてアスランの言う「思ったよりむずかしいこと」とは何なのでしょうか。
←戻る 次へ→