RSが発売された当時、いろんなカー雑誌で特集が組まれたものです。ゼロヨンや最高速、他車との比較や自動車評論家のコメントなど。発売されたのが81年の10月、私が買ったのは82年の5月。だからその間RSのことについて知りたくて、RSが載ってるページを切り抜き、ファイルに綴じてながめていました。ここではその中から、星野一義、黒沢元治、徳大寺有恒の試乗インプレッションを紹介します。文字が多いけど暇なとき読んでください。

星野一義

FJ20のポテンシャルに魅かれた!!
スカイラインといえばGT−R、GT−Rといえばスカイライン、というぐあいにオレはスカイラインにはGT-R以外にないように思っていたんだ。この車には実際、オレ自身もお世話になったしナ。2輪から4輪に転向して、デビューを飾ったレースもGT−Rだったし、思いでは尽きない。そのGT−Rが姿を消した、つまり、心臓部であるS20型エンジンが生産中止になってしまった8年半の間は随分と寂しい思いをしていたんだ。もう、こういう車は出ないんじゃないかと・・・。
ところが昨年になって、6気筒と4気筒の違いこそあれ、同じ4バルブツインカムのFJ20型エンジンを搭載した「スカイラインRS」が登場してくれた。ウレシかったネ。
さて、RSのインプレに移ろう。オレはさっきも言ったように、スカイラインにはお世話になっているし、名車だとも思うし、惚れていることも事実なんだ。だからこそ、インプレはいつもよりさらに厳しく、高レベルでやってみたいと思うんだ。
まず、心臓部のFJ20型エンジンから始めよう。レッドゾーンは75000rpmなんだけれど、そこまでは何のストレスも感じないで吹き上がるネ。その結果、車速の伸びも2リットルカーとしては最高だと思うネ。ただ、これは実測での話だ。というのは、ボディが大きいために強烈な加速感というのは体で感じられないんだ。この点はやはりGT−Rの方が上だったナ。それとS20に比べて、やはり、4気筒ということで、エンジンの音がチョットウルサかったネ。S20もノイズはかなりあったけれど、メカニカルな音だったから。
加速の話に戻すと、S20のガーン、ガーンというDOHCそのものの加速感に比べて、FJ20はすんなりと回る感じだネ。昔のS20の印象が強くてかなり回ったような気がするけれど、実際同時にFJ20と力比べをやったら、FJ20の方がやはり勝つと思うナ。ハッキリ言って、他のメーカーの2リットルDOHCなんかでは、このエンジンにとてもじゃないけれど太刀打ちはできないナ。
総合バランスの良さがRSの信条だ
次に足まわり、ステアリングにいってみよう。オレ、思うんだけれど、スカイラインの良さというのは最終的には総合バランスにあること。特にRSのバランスの良さは最高だネ。このバランスの重要な部分が足まわりとシャーシだ。
RSは誰が乗っても信頼できる足を持っているよ。例えば、下り坂でアクセルをオフにして、コーナーをクリアしようとするだろう。たいていの車だったら、アンダーが出ちゃって、外へ外へとふくらんじゃうんだ。でも、RSの場合、アクセルをオンにしようがオフにしようが、ドライバーの意志を忠実に実行してくれる。ステアリングを切ったら切っただけ、キレイにフロントがコーナーに入ってくれるんだ。これはフロントのFJ20が軽量だということも一因だナ。
逆に激しくコーナーを攻めてもリアがグッと沈み込んで路面をグリップしてくれるため、テールが流れるということはない。カウンターを切っている写真を撮ろうとして、無理やりRの狭いコーナーに突っ込んだんだけれど、それでもグリップしているんだ。コーナーとは反対に横Gをかけてから急ハンドルを切って、やっとすべるぐらいだ。だから、一般のドライバーだったら、どんなにハードに攻めてもステアリングはニュートラルを保ったままだと思うヨ。最高だネ。でも、今、言ったことはアジャスタブルショックアブソーバーをハードにした時ネ。
ショックの硬さをソフトとハードの2種類選べる新機構のアジャスタブルショックアブソーバーはオレのRSには必要ないと思う。ソフトとハードの違いはスタートや低速で良く分かるんだけれど、「RS=レーシング・スポーツ」と銘打っているんだから、ハードだけでいいんじゃないかナ。ハードの硬さにしてもガチガチというわけじゃなくて、BMWやベンツぐらいの硬さでちょうど良いと感じるんだから。マア、これはレーサーであるオレの目から観てだから、一般ユーザーとはチョイ違うかな?
細かい部分では改良の余地がある
ブレーキはフロントにベンチレーテッド、リアにディスクと4輪ともディスクなんだけれど、限界パワーで走ると少し弱く感じた。2速とか3速では充分でも、もし、サーキット等の高速ではもうチョイ効きが強い方がイイね。これもかなり高レベルを求めての話だから、街中の走行では大丈夫だ。
細部に渡ってみようか。外観はリアのデザインがいいネ。ルーフから流れてくるラインといい、コンビネーションランプのデザインといいオレは好きだネ。フロントグリルのフィンみたいなデザインはあまり好きじゃないけれど。
外観が良くても、室内に入るとガックリくるところがあるんだ。インパネ部が安っぽすぎるよ。ヒーター&ラジオのパネルが何かおマケみたいなんだ。「走りに徹しているRS」といっても、200万円を遥かにオーバーするグランツーリスモなんだから、ここは高級感を出してほしいナ。
ペダルの配置は良し。フットレストも本格的なものだ。ステアリングの重さも径もグリッドの太さもグッド。標準装備のノンスリもベリーグッド。このあたりはさすがに考慮されている。
欠点といえば、シートだナ。スポーツドライビングに最適なシャーシ、ステアリング、ペダル配置を持っているのに、シートでスポイルされているんだ。バケットタイプの形状はしているものの、シート内のスプリングが弱いし、ホールドが良くないから、コーナーなんかで体を持っていかれてしまう。シートってのはスポーツドライビングには欠かせない重要な部分でもあるんだゼ。ミッションはカチッ、カチッと決まるし、フィーリングもそれ自体はいいが、ドライバーから距離がありすぎる。1速へいれた時、手が伸び切ってしまう。これじゃ、シフトを動かすごとに疲労してしまうよネ。これはそもそも6気筒用のボディ(エンジンルーム)に長さの短い4気筒を搭載したから生じたんだろう。
最後に一言。何やかんや言っても、スカイラインというのは名車であることに変わりないし、今後ともこういう車はゼヒ残してもらいたいナ。


星野一義    黒沢元治編    徳大寺有恒