黒沢元治

スカイラインRSに着座して最初にかんじるのはシフトレバーの位置が「いやに遠いな」ということだ。いきなり走り出してすばやいシフトアップで2速から3速に入れたつもりが5速にはいっていた、なんてことにならないよう意識しておいたほうがいいだろう。
これはハンドブレーキを手前においたためのレイアウトだそうで、慣れれば問題ないにしても、実際問題としてシフトレバーはもっと近いほうがいい。
ま、それがなくとも、スポーティドライブを楽しむためのシートの位置は、いわゆるストレートアームの”つっぱり型”より腕に余裕ができるくらいのほうが好ましい。足やヒザも、ヒールアンドトウを駆使するのに邪魔にならないていどの余裕があればよく、それ以上シートを後方にずらすのは、かえってよくない。
つまり、腕も足も機敏に動作できることがかんじんで、とくにコーナリング中には両足でしっかりと自分の体をホールドできるようなシート位置を自分できめてみる。すると自然に、普通のドライビング時よりやや前のほうにシート位置をセットせざるをえないはずだ。
メリットは、たんにそれだけではない。前にほうにシートをセットすると、それだけ視界もよくなり、視界両側のフロントピラーもそれほど邪魔にならなくなってくる。これはスポーティドライブにとっては意外と大事なことなのだ。
4000回転から6000回転をキープして走れ!
さて発進。4バルブDOHCのFJ20型エンジンはよく吹けるし、そのために開発したという足もいい。
が、実際に走ってみれば実感できるが、3500回転以下はかったるい。エンジン回転は4000rpm以上を駆使して走る。踏み込めばいくらでも回る感じだ。しかし、それも7000rpmあたりが限度だろう。
最大トルクの18.5smは4800rpmで得られ、最高出力の150psは6000rpmで発揮されるというこのエンジンの性能曲線を頭に描いてみれば、このへんのニュアンスもよく理解できるはずだ。
はっきりいって、ノーマルのままのFJ20型エンジンは、6000rpm以上は無意味といっていい。性能曲線を見ると、出力もトルクも、6000rpmをさかいにガクンと落ちている。それだけチューニングアップの可能性を秘めたエンジンで、設計者の桜井さんによると「200馬力以上はかんたん」ということだけれども、ノーマルのままでは4000rpmから6000rpmまでのトルク域を常用してこそ、スポーティドライブの真価が発揮できるというものだ。
足は、前述のように、すこぶるいい。コーナリング時のアンダーも少なく、フロントが軽いので、それだけ軽快だ。コーナーに向かってハンドルを切っただけ、フロントがすなおにはいっていく感じ。
しかも後輪の追従性もいいので、初めて乗った人でも、自分がうまくなったような気がするにちがいない。
LSDの効用を身につけないとRSはあやつれない
が、ここでちょっと注意。
それはリミテッドスリップデフ(LSD)の効用を過信しないことだ。
LSDというのは、すでにご存知のとおり、コーナリング時に浮いたほうのタイヤがなるべく空回りしないですむようなメカである。
雨の日のコーナーでドリフトした時でも、さらにパワーでつなげて脱出できるのは、たしかにLSDの効用にはちがいないのだが、そのへんの効用を身につけていない人は、リアがパワースライドしかかるとびっくりして、どうしていいかわからなくなってしまうだろう。
スカイラインRSのようなスポーティカーを自分の手足のようにあやつるには、やはりそれだけの訓練をして、LSDの効用ぐらいは身につけておかなければ、かえって危険というものだ。サーキットのスポーツ走行などで練習しよう。
それが身についたなら、コーナー進入時のアンダー気味の特性を、さらにパワーオンしつづけることにより後輪のトラクションを持続させる。するとクルマは、いわゆるパワースライド状態にはいる。と同時に、かるくカウンターステアをあてながらコーナーを立ちあがる。それで安全かつハイスピードコーナリングができる。
じつはこの点こそ、スポーティドライブのダイゴ味で、いちどそれを身につけると、やめられなくなってしまうだろう。RSはそれがしやすいクルマである。
が、前述のように過信は禁物。とくに雨の路面では操縦性がシビアになるので、より慎重なアクセルワークを心がけよう。
正確なステアリングには60%扁平こそ似つかわしい
こういうスポーティドライブで意外となおざりにされているのがステアリング操作だ。瞬時のテールスライドに対する的確なステアリングの戻しが大切だ。この習慣を身につけないと、スポーティドライブはできない。カウンターをあてるときも、それは同様だ。
RSのパワーステは、他のシリーズよりも若干重くしてあるそうで、感触もスポーティドライブに適している。それだけに正確なステアリング操作を身につけると、ドライブが楽しくなってくるはずだ。
そこで結論だが、RSのようなクルマでスポーティドライブを楽しむには、5速ギアはオーバートップと心得ておいたほうがよいということだ。5速100q/hのエンジン回転は3000rpm付近。これではスポーティにクルマをあやつることはできにくい。
フットセレクターは、むろんハードにセットする。
そして走り込むはどに、キミは扁平率70%のタイヤでは、どことなく物足りなくなってくるだろう。60%扁平こそ、ぴったりくるはずだ。このクルマの足まわりは、それ用に開発されているというー。



星野一義    黒沢元治編    徳大寺有恒